このセクションでは、主要な浮体式洋上風力発電用基礎構造の種類、その他の浮体式洋上風力発電用基礎構造のデザインと材料について紹介します。
現在、技術イノベーターにより提案されている浮体式基礎構造は約 100 のデザインがありますが、実規模で実証されたのはほんの一握りです。これらの基礎構造設計は、さまざまな特性と性能を備えており、すべて、海洋石油・ガス業界ですでに効果的に使用されている 4 つの基礎構造タイプのいずれかに属します。これらについて、以下に説明します。
セミサブ型の基礎構造
概要と説明
- セミサブ型の基礎構造は、通常、ポンツーン (箱型) やトラスを使用して接続された 3 本または 4 本の浮体コラムまたはその他の浮体要素で構成されます。通常、バラストを積んで追加の安定性を確保します。
- 現在、スコットランドの Kincardine プロジェクト (Principle Power の WindFloat 設計を採用) のみが実規模実証として設置されており、ここでは 5 基のタービンがアレイ状に配置されています。
- 水深 40m 以上の海域に適しています。
- 設計時に設定できる項目として、支柱の数、タワーの配置 (偏心配置と中心配置)、構造材料 (鋼鉄VSコンクリート)、バラストシステムなどがあり、重心を下げるために水中吊り下げ式カウンターウェイトを使用する設計もあります。
- さまざまな係留およびアンカー構成で使用できます。
特性
- スパー型の基礎構造よりも喫水が小さくなります (1.3.3)。これにより港湾でのタービン設置が可能になります。
- 調整可能なバラストにより、曳航および設置時に構造全体を安定させることができます。
- タグボートやアンカーハンドリング船 (AHV) は広範な気候条件下で使用できるため、特殊船舶の必要性が低減します。
- 長さと幅の点で最大の浮体式基礎構造タイプです。
- TLP 型よりも質量が大きくなります (1.3.4)。
- 建設中の基礎構造物の陸上および水域管理(マーシャリング)には、広大な海上および陸上の面積が必要です。
- セミサブ型は、波動による動揺がスパーよりも大きくなりますが、バージ型よりも小さく、波周期が浮体の上下(ヒーブ)方向の固有周期に近い極端な気象条件下では、大きな上下運動が発生します。
バージ型の基礎構造
概要と説明
- バージ型の基礎構造には、喫水線上に単一の浮体(ポンツーン)があります。水と接触する表面積が大きいため安定性がありますが、波浪荷重の影響を受けやすくなります。
- 全体的な寸法は同等のセミサブ型よりも小さくなります。
- これまでに設置されたバージ型浮体式基礎構造としては、BW Ideol 社の Damping Pool と Saitec Offshore Technologies 社の SATH があります。福岡県北九州市 – NEDO 実証プロジェクトでは Ideol の Damping Pool のデザインが採用されています。
- 水深 40m 以上の海域に適しています。
- 設計時に設定できる項目として、構造材料 (鋼鉄VSコンクリート) と、単一の浮体の形状 (正方形または円筒形) が含まれます。
- もう1 つの重要な設計値としては、荒れた海面での基礎構造の安定性を向上させるムーンプールの有無とサイズです。
- さまざまな係留およびアンカー構成で使用できます。
特性
- タービンは保護された港湾でバージ型基礎の上に設置することができ、輸送中も安定しているため、設置場所まで曳航することができます。
- 水深のために特殊なマーシャリング港湾しか使用できないスパー型や、設置されるまで安定性が低いため、輸送と設置に特殊なソリューションを必要とする TLP型と比較して、バージ型の基礎構造を使用した浮体式プロジェクトでは、建設に関連する輸送と設置のコストが削減されます。
- 波周期が浮体の上下(ヒーブ)方向の揺れの固有周期に近い極端な気象条件下では、バージ型に大きな上下動が発生する可能性があります。このため、バージ型の基礎構造に設置されたタービンは、他の基礎構造タイプよりもタワーの大きな動きに対応できるように設計する必要がある場合もあります。
スパー型の基礎構造
概要と説明
- スパー型の基礎構造にはバラスト安定型設計が採用されています。背の高い円筒形構造物の下部に高密度のバラストを収納し、重心を浮力中心より下に下げることで、自己復元力を生み出します。
- スパー型基礎構造の喫水は大きくなります。
- このタイプの基礎構造は Equinor 社が採用しています。これには、コンクリートと鋼鉄ベースの設計による、北海での最初のプロジェクト 3 件 (Hywind Scotland など)、および長崎県南西部 2 キロにある崎山プロトタイプがあります。このタイプは現在建設中の五島市の浮体式洋上風力発電所にも導入されています。
- 水深 100m 以上の海域に適しています。
- 設計時に設定できる項目として、構造材料、バラスト材料、シリンダーのサイズが含まれます。
- さまざまな係留およびアンカー構成で使用できます。
特性
- 喫水が大きく水平面の面積が小さいため、他の設計に比べて風、波浪、流れの影響を受けにくくなります。
- 喫水が大きいため、湾岸で基礎構造にタービンを組み付けるには水深の深い場所が必要となり、地域によっては適しません。保護された深海域では浮体式設置船を使用して組み付けを行うこともできますが、コストが増加します。
- また、喫水が大きいため、設置のための曳航や主要コンポーネントの交換のために戻るための曳航が可能な場所も限られています。
- すべての技術タイプの中で通常運転時の傾斜が最も大きくなるため、アクティブバラストではこれを解決できません。
TLP (テンション レッグ プラットフォーム) 型
概要と説明
- TLP 型は係留システムを通じて安定性を確保します。通常、アンカーに垂直またはほぼ垂直に接続する係留ラインを使用します。船体に作用する上向きの浮力は、あらゆる運転荷重下でテンドン (緊張係留索) が継続的に張力を受けるほど十分確保される必要があります。
- TLP 型は石油・ガス業界では定着していますが、これまでのところ、商業規模の実証プロジェクトでは風力タービンに使用されていません。
- ポンツーンのスター型の配置は、喫水線を貫通する構造物面積が最小限で、かつ鋼鉄の質量が最小限の浮体式洋上風力タービンの用途に使用されることが期待されています。
- 洋上風力発電における最初の実スケール TLP 実証機は SBM Offshore の設計で 2023 年にフランスの Provence Grand Large に設置されました。
- 水深 80m 以上の海域に適しています。
- 設計時に設定できる項目として、構造材料、船体の形状、テンドン荷重の能動的な調整の有無などがあります。
- 係留施設の高荷重と、垂直またはほぼ垂直の構成には、打ち込み式のパイルアンカーやサクションアンカーなど、強い垂直方向の引張に耐えられるアンカータイプが必要です。
特性
- 他の技術タイプに比べて浮体構造物の安定性が低いため、設置は複雑です。このため、港湾内で TLP にタービンを組み付けた後に現場まで曳航する方式は採用できません。
- 現場で設置済み TLP にタービンを組み立てる (気象条件に左右される揺れる構造物間のリフト作業が必要) か、タービンと TLP を同時に設置可能な船上で事前に組み立てるかの、いずれかの方法が想定されます。このため、他の浮体式基礎タイプに比べて、メンテナンスのために陸上に曳航することが難しくなります。
- 係留システムとアンカーはさらに高荷重がかかり故障時に耐えうる十分な冗長性も必要となるため、他の技術タイプより高コストになると予想されます。
- 設置後の構造質量はすべての浮体式基礎構造タイプの中で最も小さくなりますが、輸送と設置、係留システムとアンカーにかかるコストが高額になるという欠点があります。
- 設置後は、スパー型を除いたすべての浮体式基礎構造タイプの中で、最も基礎構造の動揺が少なくなります。これにより、他のタイプと比べてタービンおよびアレイケーブルにかかる構造質量が低減されます。
- 係留システムは安定性にとって極めて重要となるため、地震活動が活発な地域ではTLP型の使用に抵抗がある可能性があります。
その他の浮体式洋上基礎構造のコンセプト
ここに含まれるその他の浮体式洋上風力発電における基礎構造のコンセプトは、これまでに説明した 4 つの基礎構造タイプの変化形ですが、斬新であるため、特記に値します。多くのコンセプトが質量を大幅に削減できる可能性を秘めていますが、設計の複雑さが増す場合が多くあります。石油・ガス業界から得た教訓では、複雑さよりもシンプルさが有利となります。しかし、業界は他のコンセプトも適切に検討することが重要です。
ここに含まれるコンセプト例の非網羅的なリストは、潜在的な画期的ソリューションの広がりを示すことを意図しています。
- カウンターウェイトのコンセプト。一例として、Saipem の Hexafloat が挙げられます (図 5 を参照)。これらは、セミサブ型 (輸送時の浅い喫水) とスパー型 (深部の質量による安定性) の利点を兼ね備えています。課題はカウンターウェイトの昇降メカニズムの複雑さにあります。
- 単一点を中心に回転することでタービンのヨーシステムが不要となり、支持構造体があらゆる方向からの荷重に耐えることができます。例としては、X1 WIND 社の PivotBuoy、Aerodyn 社の Nezzy2、Saitec 社の SATH などがあります (図7 を参照)。これらは、石油・ガス分野の浮体式生産貯蔵積出設備ソリューション (FPSOs) で実績のある技術、タレット係留/一点係留方式を採用しています。課題は、強い波や潮汐が風向と一致しない場合に浮体式洋上風力タービンがどのように動作するかという点です。
- ダウンウィンドローター。例としては、X1 WIND 社の PivotBuoy や Aerodyn 社の Nezzy2 などがあります (図 6 を参照)。これらは通常、ピボット式基礎構造によって可能になり、タワーブレース、ガイドタワー、傾斜タワーなどの非従来型のタワーコンセプトが可能になります。課題は、既存の風力タービン製造業者の重点が、陸上および着床式洋上風力基礎構造で使用できる、ヨーシステムに依存するタービンコンセプトに置かれているという点です。
- 複数のローター。例としては、Hexicon 社や Aerodyn 社の Nezzy2 などがあります (図7 を参照)。これらは通常、ピボット式基礎構造によって実現され、単一の浮体式基礎構造の設置容量を 2 倍にすることで、MW あたりの浮体式基礎構造とアレイ接続によるコストを削減できる可能性があります。課題は、1 基のタービンが停止した場合の他タービンへの影響です。
- 垂直軸型浮体式風力タービン。例としては、SeaTwirl 社の S1 および S2 があります (図 8 を参照)。課題として、陸上の垂直軸型風力タービンにおいては主にローターの性能係数が低いため、水平軸型タービンよりも均等化発電原価 (LCOE) が高くなるという点があります。
- 風力と波力の複合発電装置: 例としてはFloating Power Plant (FPP) などがあります (図9 を参照)。
1 点を中心にピボットする浮体式基礎構造物 左: X1 WIND 社の PivotBuoy (画像提供: X1 WIND 社、無断複写・転載を禁じます) と 右: Saitec 社の SATH (画像提供: Saitec 社、無断複写・転載を禁じます)
複数のローターを備えた浮体式基礎構造物 左: Hexicon 社の TwinWind (画像提供: Hexicon 社、無断複写・転載を禁じます) と右: Aerodyn 社の Nezzy2 (画像提供: Aerodyn 社、無断複写・転載を禁じます)
主要材料としてのコンクリートと鋼鉄の比較
浮体式基礎構造のタイプは、鋼鉄製、コンクリート製、またその両方を用いたハイブリッドタイプが設計されています。使用材料の決定は、さまざまな要素を考慮してケースバイケースで行われます。たとえば、Equinor 社は 2017 年に 30 MW の Hywind Demo プロジェクトで鋼鉄製スパー型基礎構造を使用し、88 MW の Hywind Tampen プロジェクトではコンクリート製スパー基礎構造を使用しました。
開発事業者が材料を選択する際に影響を与える主な要因は 4 つあります。
コスト
- 鉄筋コンクリート、またはハイブリッド基礎構造の使用を発電事業者が決定する際には、プロジェクトの全段階にわたるコストの慎重な検討が伴います。
- 鉄鋼はコンクリートよりもトン当たりのコストが高くなることが予想されますが、鉄筋は鋼板よりも安価です。
- 鋼板価格はさらに変動が激しく、1 年以内に最大 50% の変動が記録されています。コンクリートの価格は比較的安定傾向にあります。鉄筋コンクリート構造では、特に補強のために大量の鉄鋼が使用されていますが、全体の量は鉄鋼が主材料である場合に比べて数倍少なくなります。
サプライチェーン
- 現地に既存の鋼材加工サプライチェーンがない場合、新しい施設への投資が少なくて済むため、コンクリート製造設備の確立がより簡単な場合があります。
- コンクリート製造を現地で行うことにより、鋼材加工工場に比べてより多くの雇用が創出されます。鋼材やセメント製造に関連する雇用も考慮する必要があります。
- コンクリート製の基礎構造は鋼鉄製より重いため、持ち上げや曳航により多くの労力が必要となり、輸送時にはより深い水路が必要となります。
環境への影響
- 環境への配慮は開発業者にとって重要であり、オフテイク競争入札の決定基準として含まれる場合があります。カーボンフットプリントは、鋼鉄やセメントの製造方法、運用寿命、使用済み製品のリサイクルや再利用の有無によって異なります。
- 鋼鉄は頻繁にリサイクルされます。コンクリートは粉砕されると予想されます。ライフサイクル分析は、この種の分析に役立つツールです。
設置場所の条件
- さまざまな材料の性能は経年変化するため、気象・海洋条件が材料の選択に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、コンクリート製の基礎構造は凍結融解による損傷を受けやすい一方で、鋼鉄製の基礎構造は腐食を受けやすい傾向にあります。
- 浮体式洋上風力発電は、より広範な洋上風力産業とともに、主に西ヨーロッパで発展してきました。この地域は平均風速が比較的高いものの、アジア太平洋地域でよく見られるような極端な気象や地質現象は発生しません。このため、日本や韓国の浮体式洋上風力発電の設計では、こうした厳しい条件を考慮する必要があり、耐久性を確保するための適応が潜在的に必要となります。材料の選択と基礎構造の設計は地域の環境的課題の影響を受ける可能性があるため、コンクリート製と鋼鉄製の基礎設計のどちらを選択するかは重要な考慮事項の 1 つです。
浮体式洋上変電所
概要と説明
- 着床式洋上変電所が設置不可能な海域 (水深>150m 以上) の洋上風力発電プロジェクトを展開する場合、浮体式洋上変電所が必要です。浮体式洋上変電所はタービンから電力を集め、変圧器を使用して電圧を昇圧し、高電圧ダイナミック送電ケーブルを介して陸上の送電網に送電します。
- 従来の変電所と同様に、浮体式洋上変電所は、すべて上部構造に収容された昇圧トランス、高電圧開閉装置、補助システムで構成されます。
- 世界で唯一、実規模で実証された浮体式洋上変電所は 2013 年に日本の福島県沖に設置され、3 基のタービンに接続されました。変電所は合計 16MW を処理し、66kV の送電ケーブルを介して送電網に送電しています。ジャパン マリンユナイテッド株式会社設計によるアドバンストスパー型の基礎構造コンセプトを採用しています。
- いくつかの大手企業が提携し、次のような浮体式洋上風力発電のコンセプトを開発しています。
- Semco maritime 社、ISC consulting 社、Inocean 社は拡張性のある浮体式変電所コンセプトを発表
- Saipem 社と Siemens Energy 社は、500 MW の浮体式セミサブ型 変電所を開発中です。
- BW Ideol 社、日立 ABB パワーグリッド社、Atlantique Offshore Energy (AOE) 社は、水深 40 m を上限とする、着床式および浮体式の洋上風力発電所で使用できる浮体式変電所のコンセプトを開発しました。
特性
- 浮体式洋上変電所は、電気機器が水の流体力学的動きに耐えられるよう、高い安定性の要件を満たすように設計されることが予想されます。
- 商業規模プロジェクト用の浮体式洋上変電所は 66kV を超える電圧のダイナミックケーブルを必要とし、浮体式洋上風力プロジェクトのライフサイクル全体にわたる疲労と周期的な動きに耐えるように設計されます。
- 浮体式洋上変電所は、風力タービンに使用されるものと同様の基礎構造設計 (セミサブ型、TLP 型、スパー型、バージ型) を使用し、鋼鉄係留索、チェーン、または繊維ロープで係留され、すべてアンカーで海底に固定されます。
- 浮体式洋上変電所には、運用・保守管理作業を支援するためのヘリデッキも装備されます。









